ビスケさんといっしょ



<移動編>


「今日はこれまで」

「ありがとうございました」

「だいぶ念の量が増えたわね」

「そうですね。扱い方もなれてきましたし」

「修行の方もひと段落したし、来週あたりからいろんな所まわってみようか?」

「え?いいんですか?」

「もう少しかかると思ったけどね。それに、元々そういう話になってたんだから心配ないわさ」

「そうですか。今日はもう終わりですよね?」

「そのつもりだけど、どうかした?」

「ええ、移動用の念をまだあまり試してなかったので、今やってみようかと思って」

「へぇ、どこで試すのさ?」

「とりあえず、ここと湖の小島で試してみようかと」

「それじゃあ何か証拠品もってきなさいよ」

「分かりました。では」


強制転送(ムーヴ ムーヴ)point(12.472 , 2.261 , 0.023) )

シュッ!


「......」


シュン

「.........ただいま戻りました」

「...ずぶ濡れだねぇ」

「はい。高さが足りなくて水の中に出てしまいました」

「土の中じゃないだけましだったろうさ」

「...そうですね」

「それじゃああんたはそれで家まで帰りな。あと一回できるんだろう?」

「はい」

「本当に土の中に出たり、壁の中に出たりしないように気をつけなさいよ」

「......はい」









<しごとはじめ編>

、あんた情報屋になってみる気ない?」

「どうしたんですか?いきなり」

「だってあんた、情報を集めるだけ集めて放りっぱなしじゃないさ。それだったらいっそのこと情報屋にでもなってお金稼いだら?」

「でも、仕事を受けるか受けないかの基準が分かりませんよ?」

「そんなの依頼内容とか、金額とか、目的とかで選べばいいんだわさ」

「そういうものなんですか?」

「そういうものだわよ。それに、最初はあたしやアサヒに聞いて判断してもいいんだし」

「そうですね...物は試しといいますし、やってみます」

「なれてきたら一人でやってみなよ?」




−1時間後−





「ビスケさん聞きたいことがあるんですが...」

「ん?なんだわさ?」

「一応面白そうな依頼があったんのでこれを受けてみようかと思ったんですが...」

「えっ!あんたもう始めたの!」

「はい。パソコンでのやり取りだけなので、結構早く準備は終わりましたよ」

「ふーん、そんなもんかねぇ。ところでどんな依頼なのさ?」

「プロポーズをするために、世界に一つだけの珍しい指輪を探してるそうなんです」

「結構一般的な内容ね。あんたこういうのが好きなの?」

「いいえ、別に。依頼者が18歳の男性で、贈る相手が70歳の女性だったので面白いかなぁと思いまして」

「孫とばあさん位離れたカップルかい...でいくらなのさ?」

「報酬としては20億ジェニーだそうです」

「20億!!(これだけの内容で20億!!にもっと依頼を受けさせたらそのうち...)」

「...ビスケさん、何かたくらんでる顔になってますよ」

「あら、ホホホホホ...」








<おかいもの編>


「そういえばって女の子にもなれるんだったわね」

「はい。以前よりエネルギー総量が増えたので、2時間ほどで変われるようになりました」

「それなら、ちょっと女の子になって。買い物に行くわさ」

「?、別に買い物ならこのままでもいいのでは?」

「あんたの服を買いに行くからよ」

「だったら今のままの方が良いと思いますけど。サイズが変わってしまいますし」

「分かってないわねぇ。女の子の方がいろいろおまけしてくれるし、何よりあたしが楽しいじゃない!」

「......2時間ほどお待ちいただけますか?」

「もちろん。うふふふふふふふ、どんなの選ぼうかしら?

「......(気が重いなぁ)...」




−2時間後−




「それじゃ、行きましょうか。うふふふふふふふ

「...はい(行く前からかなり不安なのはなぜでしょう?)」



−買い物中−


「あ、これかわいい。こっちも似合いそう。あと、これと、あれと、これと...」

「.........」

「うーん、あっ、これもいいね。はい、これ試着してね」

「...はい」

「あとこれと、これと、これと、これと...」

「......ビスケさん」

「ん?なにさ?」

「さすがにこれだけの量は試着室に入りきりませんよ。それに、全部買うわけではないのですし...」

「まぁ、全部は買わないけどほとんど買うよ」

「...........は?」

「お金は気にしなくてもいいわよ。アサヒに頼まれたものだから、アサヒもちだし」

「えっ!何でアサヒさんが!」

「あんたが着飾ったところ見たいんだってさ。後、アクセサリーと化粧品と靴も見て、ホテルに帰ったらアサヒに送る写真撮るからね」



「......勘弁してください」








<プレゼント編>


「ん?、どうしたのさそれ」

「近くの露天で売ってたんです。傷物だからって安くしてもらいました」

「まあ、それくらいのオニキスなら1000ジェニーもあれば買えるしね」

「ええ、500で買いましたから、傷がついてなかったらそれくらいだと思います」

「それで、これどうするのさ?金具も何にもついてない状態じゃあ無くすのがオチだよ」

「自分で付けますよ。試したいこともありましたし」

「?、縫い針なんか出して、どうするのさ?」

「こうやって、これ(オニキス)に花を彫るんですよ」

「なるほど、周をして彫るのかい。でも、力加減を間違えると割れると思うけど」

「ええ、ですから周の修行を兼ねてやってみようかと思って。普通の石でもよかったんですけど、どうせなら宝石の方がきれいかなぁと」

「まぁ、発想は面白いと思うからやってみたらいいわさ」

「はい」




−3時間後−




「んー、こんなものでしょうか?」

「どれどれ、見せてみなよ」

「はい、どうですか?」

「...............」

「えーと...もしかして変でしたか?」

「え!いいや、きれいだわよ!」

「でも...」

「本当だって。ただ宝石店だってここまでのものは作れないから、驚いただけだわさ」

「それならいいんですけど」

「...、これに金具つけたらあたしにくれない?」

「別にかまいませんけど。どうせならもっと良い石で作りますよ?」

「これがいいんだわさ」

「はぁ...ブローチでいいですか?」

「うん。銀の土台にしてね」

「分かりました」



−翌日−



「え?アサヒさんにですか?」

「そう、ならパソコンをテレビ電話に出来るでしょ?最近、連絡してなかったからね」

「分かりました。...(呼び出し中)...アサヒさん、お久しぶりです」

?久しぶりね。どうしたの急に連絡をよこすなんて...ケガはしてないみたいだけど』

「今日は「アサヒ、久しぶりだわさ」

『ビスケ、急に話しに入ってこないでちょうだい。せっかくと話してたんだから』

「まあまあ、今日はあんたに良いものを見せてあげようと思ってね。ほら、きれいだろう」

『確かにきれいだけど、それだけのために電話してきたの?』

「あら、そんなこと言っていいのかしらねぇ。が初めて作ったやつなのに」

『...が?』

「そう!そんでもってあたしに初めて作ったやつをプレゼントしてくれたのさ!」

「え?ビスケさ『ナッ!!なんで!ずるい!そういうのは親が最初にもらうものでしょう!』

「あの「ほほほほほ、そんなもん早い者勝ちに決まってるわさ」

「あ『ビスケのバカー!!!!譲りなさいよ!』

「ほほほほほ...」

「......(終わるまで待とう)」



3時間近くこのやり取りが続きました。




<ハンター協会編>



、悪いんだけど今日の予定変更だわさ」

「かまいませんけど...どうしたんですか?そんな嫌そうな顔をして」

「ハンター協会から呼び出しがあったのよ」

「そういえば、以前も依頼を受けていらっしゃいましたけど...仕事を受けるのが嫌なんですか?」

「依頼の内容自体は、大したことはないんだけどねぇ」

「?、それなら別にかまわないのでは?」

「問題は依頼内容じゃなくて、依頼してきたやつだわさ」

「...(ハッキング中)...依頼してきたのって、一昨年協会の会長になられた方ですか?」

「そう、ネテロって言うんだけどね...心源流の師範で実力者なんだけど、すごく人が悪いから会いたくないやつなんだわさ」

「お知り合いなんですか?」

「不本意なことに知り合いなんだわよ。アサヒもネテロのことは知ってるけど、滅多に会わないから被害は少ない方だわさ」

「えーと、ビスケさん、メールに私と『いっしょに来るように』って書いてあるってことは...」

「あんたも被害者の仲間入りだわね」

「.........」




−待ち合わせ場所−



、一応あたしも注意しておくけど、ネテロが来たら知らせなさいよ」

「?、ビスケさ「人が悪いから、絶対に絶をしたまま近づいてくるに決まってるわさ!」

「あの「そんでもって、『ハンターの癖に鈍いのぉ』とか笑いながら嫌味を言うんだわ!」

「えーと、ビスケさん...右の方を見ていただけますか?」

「ん?右?(首を動かして右を見る)...ゲッ!!」

「......(目線をそらす)」

「ほっほっほ、ではおぬしの希望どおり言ってやろうかの。『ハンターの癖に鈍いのぉ』」

「−−−−ッッ!!(怒りのあまり声にならない)」

「ほっほっほ」

「......(うわぁー)」




ビスケさんはこの後30分ほど、からかわれ続けました。









<ビスケさんのお仕事編>


「まったくやってられないわさ!!」

「...(苦笑)」

あんのジジィ、散々あたしをからかって、何が『年下()に負けてるようではのぅ』よ!」

「私の場合は例外ですしね...」

「それに依頼内容自体あいつが持ってくるほど重要じゃないじゃないさ!」

「ビスケさん、お茶です」

  ガシッ!

「あー!腹立つ!」

 ぐびぐびぐび...プハァー     ダン!!

「落ち着かれましたか?」

「まだ少しむかついてるけどね」

「明後日から1週間、メイニルス美術館でしたよね?」

「そう、あんまり有名なところじゃないから、警備する彫刻くらいしか目ぼしいものはないだろうけど」

「ビスケさんがお仕事の間、どうしてましょうか?」

「何言ってんのさ?あんたもいっしょに仕事するんだわよ」

「いいんですか?」

「当たり前だわさ。そうじゃなかったら、ネテロがあたしといっしょに呼び出すはずがないじゃない」

「それもそうですね」

「気を引き締めなさいよ。あんたにとって、初めての実戦経験になるんだから」

「狙ってくる人がいればですけどね」

「まぁ、そうだけどね」




−10日後−





「......」

「結局、誰も狙ってきませんでしたね」

「おかしいわねぇ、ランクBの窃盗団が2組狙ってるって言ってたのに...」

「へぇー、そうだったんですか(目をそらす)」

「...!!、あんた何やったのさ」

「.........えーと」

「アサヒといっしょに、あんたでファッションショーやってもいいんだけど」

「狙ってたって言っていた人たちの行動を、ブラックリストハンター達のホームコードに生中継してみました」

「.........あんたねぇ」

「ちょっと、『小さな蜜蜂(シークレット アイズ)』とハッキングを同時にコントロールできるかやってみたかったので...」

「だからって...」

「えーと、すいません」

「......(はぁ)もういいわさ」








<お食事編>


「............データ収集終了」

「ん?今回は随分と時間がかかったわね」

「ええ、『贋物の本物(パーフェクト イミテイション)』を試してみようと思ったので、情報を多く集めてみました」

「そういえば、まだあたしとアサヒでしか試してなかったわね」

「はい、本人に会ったことがない状態でどれ位できるのか、今回ので分かると思います」

「やってみるのはいいけど、あたしの知ってる人じゃないと比較出来ないわよ」

「大丈夫ですよ。少しキッチンを使わせてもらいますね」

「?、何でキッチンなんだわさ?」



 −30分後−



「ビスケさん、出来ましたよ」

「あれ?これってこの前食べに行ったところの?」

「ええ、簡単に比較するだけなら、料理や芸術関係の方がやりやすいので」

「ああ、確かにね。これならすぐに結果も出るしね」

「はい。あ、そうだ!」

「どうしたのさ?」

「ちょっと待って下さい。『贋物の本物(パーフェクト イミテイション) object『ルシェロ』』」

   フッ

「あーっ!」

「どうぞ、こちらへお客様」

「...あの店で一番かっこよかったボーイじゃないさ!」

「ありがとうございます(微笑)」

「アサヒの言ってたとおり、あんた凝り性だねぇ」

「そうですか?」

「そうだわよ。それじゃあ、いただきます」

「はい...いかがですか?」

「.........店で食べたのよりおいしいのは何でさ?」

「え?ちゃんと同じになるように作ったんですけど...」

「まぁ、身内の欲目って言うのもあるだろうけどね。ところで、その能力って攻撃用に作ったんじゃなかったの?」

「ええ、そうなんですけど...対象者も四六時中戦っているわけではないので、情報が集まりにくくて」

「ああ、なるほどね。情報が集まったら、実戦をやってみるわよ。使い慣れとかないとね」

「分かりました」









<実戦編>


「ビスケさん、買出しに行きませんか?食料が少なくなってきましたから」

「そうね。あ、ちゃんと女の子の格好しなさいよ」

「...おまけしてもらうためですか?」

「当然でしょ」

「(はぁ)分かりました」

「ほらほら、ため息つかない!さっさと準備する!」

「...はい」



 




「ほほほ、今日も大量だわさ」

「半分近くおまけですからね」

「まあね(得意げ)、あそこでお茶してから帰りましょう」

「分かりました」

「いらっしゃいませ、2名様ですか?禁煙席でよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」

「では、こちら「いらっしゃいませー」

ガシャーン!!

「動くなあ!」

キャー!!!

「!、ビスケさん!!」

ー!(周りに見えないように人差し指を立てる)」

「ッ!(凝...)」

『あんた一人で倒しなさい。念を覚えてないやつだから簡単でしょ?』

(突発的に初実戦て...まあ、いきなり念能力者じゃないだけマシでしょうか)


タンッ (背後へ移動)
    
  パァーン!! (手刀を首筋に)

バタン... (倒れました)


 ........ざわざわざわ....



「こんなもんですか?」

「そうね、初めてにしてはまずまずじゃない?」

「買い直さなければならないもの、ないですよね」

「大丈夫だわさ。さ、めんどくさくなる前に帰るわよ」

「そうですね」








<ケイタイ編>


「あら、あんたその携帯ずいぶんボロボロになったんじゃない?」

「ええ、でもボロボロなのは外側だけですし」

「買い換えたら?仕事してるんだから、お金がないわけじゃないんでしょ?」

「仕事が仕事なので、かなりのデータが入っているんです。ショップでデータを移して貰うわけにはいきませんし」

「あんたの念は使えないの?」

「一応バックアップとして取ってはいるんですけど...新しい携帯に入りきるか分からないので」

「そういえば、あんたかなり改造してたんだったわね。でもそのままだと、結局壊れるんじゃない?」

「そうですね、3ヶ月もてば良い方だと思います」

「買い換えるのが嫌なら外側だけ交換するか、自分で一から作れば良いわさ」

「...そうですね。それが一番手っ取り早いかもしれませんね」

「そうしなさいよ。あんたの好きなようにやれるんだし」

「はい。ビスケさん、今から材料を買いに行って来てもいいですか?」

「今から?」

「はい。1時間もあれば終わると思いますし...」

「まあ、それくらいなら大丈夫だわさ」

「ありがとうございます」





−1時間後−




「ただいま帰りました」

「おかえり...ずいぶん少ないねぇ」

「大きいと持ち運びしにくいので。それに、プログラムを組むのは頭の中で出来ますから」

「(の持っていた袋の中を覗き込んで)また黒い携帯にするのね」

「ええ、それなりに愛着もありますし」

「ふーん...ところで中身はどういう風にするんだい?」

「そうですね、とりあえずメモリーは最低でも10(テラ)位でしょうか?耐水・耐衝撃に、圏外もなくして...あとデータを守るために、神字(念能力を補助する文字)と認証システムを使って、私にしか使えないようにしようかと」

「...そんなのできるの?」

「少し時間はかかりますけど、出来ますよ」

、それって他にも作れる?」

「ええ、材料さえあれば。ビスケさんの分ですか?」

「うん、とおそろいにしてアサヒに見せびらかそうと思って」

「(苦笑)では今度はいっしょに買いに行きましょうか?デザインはかわいらしい方がよろしいでしょう?」

「そうね。でも、今度と言わず、今から買いに行くわよ!」

「分かりました(さらに苦笑)」









<あそび編>


『...あなたも絵本の世界を体験してみませんか?夢と冒険のアトラクションが勢ぞろい!...』

「ん?」

『さあ!フェアリーランドへ!今なら...』

「ふーん.............(ニヤリ)」





、明日遊園地に行くわよ」

「遊園地ですか?」

「そう、あんた修行ばっかりで遊びに行ったことないでしょ?」

「ありませんけど...遊園地って、人ごみがすごいんじゃなかったでしたっけ?」

「さすがに休日だとすごいけど、明日は平日だからそれほどでもないわさ」

「へぇー、そうなんですか」

「で、もちろん行くでしょ?」

「(断定ですか...)行きます」

「よし!あんた明日は男の格好ね。身長は175くらいで、髪はこの(雑誌)モデルみたいにして、服はこれね」

「...男の人の格好ですか?」

「そうよ」

「珍しいですね。大抵、女性の格好をさせるのに」

「女の子2人だと余計なのがよってくるからね」

「ああ、虫除けのためですか」

「そういうことだわさ」





−1週間後−





ピピピピピピピピピピ......

「はい。アサヒさんから連絡してくるなんて、めずらしーーーーーッ!!!どういうことよーーーー!!』

「...(耳が...)えーと、何がですか?」

『何がじゃないわよ!何でビスケとなんかデートしてるのよ!』

「...............はい?」

『いっしょに遊園地に行って、お化け屋敷でさりげなくかばってもらったとか、手をつないで歩いたとか、アイスを食べさせあったとか何ベタなことしてるのよー!!』

「あの...」

『いっしょに写真まで撮って!!散々自慢されたんだからね!!』

「えーと...」

『大体何が『お店の人にお似合いだって褒めてもらったわさ』よ!いくつ歳が離れてると思ってるのよ!』

「.........(ビスケさん...)」

『大体ねぇ!−−−−ッ!!−−−−−−!−−−−−………』




6時間アサヒさんはグチを言い続けました。(ぐったり...)







戻る